加工見積り時間について


 最近は、より一層の合理化のため徹底した工程管理を行う現場が増えてきています。 その中で必ず問題になってくるのが「加工時間の見積り」。 この結果が大きく外れてしまいますと、機械の利用計画自体が意味を持たなくなってしまいます。

 以前から問い合わせの中でも比較的多かったのですが「加工見積り時間(「NCデータ(N)」->「帳票出力(V)」)の出力値が、 実際の加工時間よりかなり短い」と言うご指摘をいただいてきました。
 本件に関しまして、様々なケースで調査してきましたところ、 G01,G02,G03など移動情報の動作中の速度分布が大きく影響を与えていることが判ってきました。

 同様の問題が出ている場合には、 まずは「F4」キーにてMTLファイル内の切削送り時の各軸の加速度MAXIMUM ACCELERATION(X or Y or Z)の指定を、 実際の加工時間との比較を行いながら、かなり小さく設定(0.01〜0.1)してお試し下さい。 データにもよりますが、ほとんどのケースで改善の方向に向かうものと思われます。 (※早送り時G00の各軸の加速度RAPID ACCELERATIONは、あまり大きな影響はないはずです。)

 ただし、これで完全な解決になるわけではありません。今後のためにも問題の本質をご理解いただき、 同様の問題が起きた時の判断材料にしていただければと思いますので、 多少NC制御装置や算出側の立場にたった見方になりますが、補足説明させておいていただきます。


<加工見積り時間の算出>

 加工見積り時間の算出(TRYCUTでは「NCデータ(N)」->「帳票 出力(V)」)は、多くのCAMシステムやシミュレーターで様々な仕様のものが用意されています。

a) 移動距離と指令F値から単純計算するもの
b) a)の結果に一定比率を掛けて遅めにしたもの
c) TRYCUTのように加速/減速を考慮したもの

 通常、a) の処理を用意していても、まずほとんどの場合は実際の加工時間よりかなり短くなります。
 そのために厳密な根拠はないものの、a)の結果にある一定の比率をかけて遅めの結果を出力する b) などは様々なシステムで見られます。
 また、もう少し踏み込んでTRYCUTのように加速/減速を考慮しようとトライしている c) などもあります。


<実際の加工時間と異なる原因>

 考えられるものを列記しますと、

・指令速度より実際は、かなり遅い速度で動作している。
・Mコードなどの処理中の速度が異なる。
・工具交換速度が設定と異なる。もしくは考慮されていない。
etc...

 要因を上げればキリがありませんが、 この中でも最も影響を及ぼしているのが、「指令速度より遅く動作している」ことです。


<なぜ指令速度より遅く動作するか?>

 これはいかに先端技術を駆使したNC工作機械とは言え、 物理法則の壁を越えるような制御は出来ないことが原因です。 詳細はこちら(G01動作について)をご参照下さい。
 問題を簡単にするためG01動作を例にした説明していますが、G02,G03などの移動情報でも基本的には同じです。

 加速/減速と言う概念は加工見積もり時間を算出する上でも避けて通れません。 そのためにTRYCUTでは各軸の加速度を設定できるようにしてきたのですが、 次の理由により、設定を誤ると大きく見積もりが外れることがあります。


<加速度制御の限界>

 加速や減速度のスピードが、大きく影響するなら、 それを最大限与えれば解決するのではないかという期待も出てくるかと思います。 しかし、この部分もメカニズムの限界で力任せにできないところがあります。
 加速や減速はサーボに流す電流(≒加加速度)によって制御を行っています。 電流は加速するに従ってスムーズに流すことが重要です。 そうでない場合には機械に振動が生じ、高精度な加工が出来なくなります。
 これを抑えるために制御装置側で様々な調整が行われ、 本来与えることが可能な加速度を十分出し切れない現象が頻繁に発生します。 極端(微小移動が連続)な場合は加工中の全てがこの現象だと言っても過言ではありません。

 また追従性の問題など、機械からのフィードバックも加味して状況に応じた制御を行うため、 理想の加速度を与えることが出来るのは極限られたタイミングだけとなります。

 せっかく加速度まで考慮しても、見積もり時間がかなり短くなってしまう最大の原因はこのあたりにあります。 ですから本ページの冒頭で書きました加速度を下げて設定すると言う解決方法に至ってしまうのですが、 これも完全とは言えません。どこまで安定して近い値が出せるかという観点で見ていただく必要があります。


<妥協点>

 これらのことを念頭にしますと、最終的に加工見積もり時間の算出は、 TRYCUTのように加速度まで考慮しているものでも、それを一定の値として見なすのであれば、 やはり片手落ちで、突き詰めると実際の制御装置で行っている処理と同様のことを行う必要が出てきます。
 しかし現実的には、CAMシステムにしろ、シミュレーターにしろ、 各制御装置の処理を全て実装などとても無理な話でもあります。

 当面は現行仕様を妥協点として様子を見たいと考えています。

※これ以上のステップはTRYCUTの制御装置化になるのかもしれません。

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